2024.10.25
従来お墓の彫刻といえば、「〇〇家之墓」や「南無阿弥陀仏」のような文言が刻まれた墓石が多く見られていました。
しかしながらここ最近では、生活様式の多様化に伴いお墓の形状も洋型やデザイン型などさまざまな形の墓石が利用され、絵柄の彫刻も多彩なものになりました。
彫刻の中でも、お花の彫刻が特に人気が高い傾向にありますが、どのようなお花を選べばよいかわかりにくいものです。
ここでは、花彫刻デザインの魅力や選び方などを解説します。
墓石に彫刻を入れる際には、墓石によってはあまり適さない形状があるので気をつける必要があります。
一般的に和型墓石は、縦長でスペースが少ないのでデザイン彫刻を施すのに適さないとされます。
洋型やオリジナルデザイン型に施されることがほとんどです。
実際に彫刻される花の種類や選び方などは次のようなものがあります。
実際に彫刻で選ばれやすい花は、以下のような花があります。
桜の花は毎年花見に行く方も多いので、馴染み深く思い入れのある花なので人気の花です。
全体的に柔らかな印象がある花なので、女性らしさや華やかな印象になります。
学校から墓地まで、人生においてのさまざまな起点の場所にあるので、新たな始まりのようなイメージになります。
菊の花は、皇室の紋章や国花でもあるので格調の高い花であるとして古来より人気があります。
高潔や高貴なイメージがあるので、気品のある印象になります。
不老長寿を象徴する花なので、衰えることのない永遠の愛を表現するのに使用します。
蓮華の花は、仏教のシンボルとして古来より親しまれていることもあり、宗教的な神秘性を演出することができます。
また、仏様になった故人を偲ぶ為に、蓮華を墓石に刻む方が多いようです。
百合は、お参りや供養の際に供花としてよく利用される馴染みの深い花です。
仏教以外でも、キリスト教などの追悼儀式に利用されます。
百合の花は、純粋や優美なイメージを演出するので墓石に美しさを演出します。
前述以外では、牡丹、ひまわり、藤、すみれ、紅葉、あやめ、などの花柄があります。
どの花もそれぞれの魅力がありますが、一般的に墓石は和風なデザインとの相性がよいとされるので、和花を利用することが多いようです。
花彫刻に使用する花の選び方は、基本的には自由になりますが、宗教などにより適さない花などもあります。
仏教では、彼岸花、むくげ、椿などは死などのよくない意味を連想させるので避けるべきといわれます。
キリスト教では、薔薇や赤い花は血を連想させるのであまり好ましくないといわれます。
宗教問わず花が首元からポロリと落ちるような花は、縁起がよくないとされるので避ける傾向があります。
しかしながら、生前個人が愛し親しんだ花などは、ご家族の同意の元に利用されることもあります。
選ぶ際の基準としては、トラブルにならないデザインで長く故人を供養できるものを選ぶとよいかもしれません。
墓石に彫刻を刻む際には、墓石として使用する石材の種類によって見やすいものや見にくいものがあるのを知る必要があります。
黒御影などは、磨いてある箇所が黒いので削った箇所が白くなり非常に目立ちます。
逆に白御影などは、磨いた面と彫刻面の差がつきにくく、着色しないと見にくい傾向があります。
花彫刻に着色すると見やすく華やかなイメージになりますが、汚れなどが目立ちやすくなる傾向もあるので、定期的にメンテナンスをする必要もあることを認識しましょう。
実際に花彫刻を刻む際の流れは次のようになります。
花彫刻のデザインを決める際の流れは以下のようになります。
h4 ①彫刻する場所を選定
墓石に彫刻を施す際に、どの場所にデザインを刻むか決めます。
デザイン型や洋型などで花を彫刻する際には、墓石の形状により空きスペースが異なるので場所を選定して適切な場所に決めましょう。
h4 ②彫刻に使用する花を決める
彫刻に使用する花は、前述のように故人の想いを反映させて選択しましょう。
石材店によってオリジナルの図柄やデザインサンプルがあるので、イメージに合うものがあるのか相談しながら決めるとよいでしょう。
h4 ③彫刻の色や大きさを決める
彫刻を入れることができる大きさは、空きスペースによってや他の彫刻とのバランスにより決まるのであらかじめ打ち合わせます。
花彫刻に着色する場合には、石材の色により色を入れれない場合があるので注意しましょう。
花彫刻を施す際には、イラストの加工方法を決める必要があります。
サンドブラストとは、墓石に研磨剤として砂を吹き付けて花が浮き上がるような表現をする加工法を指します。
デザインの周りを彫り込みデザインを浮き上がらせるので、濃い色の墓石などはっきりした見た目になります。
デザインの中で、筆を強く置く箇所を深く彫り込むことでメリハリのある表現にします。
最もスタンダードな彫り方で、文字を彫るときなどにもよく使われます。
細い線を彫る技法で、淵彫りやスジ彫りなどともいいます。
イラストなどの細い線を彫刻する際に用いられます。
花の形を立地的に彫り込む技法です。
職人の手業で、深く陰影のある重厚感なども演出でき、サンドブラストを組み合わせて利用すると浅めの彫刻でも精巧なデザインが彫り込めます。
レーザー彫刻は、さまざまなものに加工できる技法で有名ですが、墓石にも彫刻を施すことができます。
一般的に写真やグラフィックデザインを施す際に使用しますが、花彫刻も施す事ができます。
梨地彫りとは、花びら、茎、葉っぱの部分を前述のサンドブラストで彫った後に、ノミで表面を荒らす技法です。
仕上がりが梨の皮のようにザラザラした表面になるので味わい深い見た目になります。
墓石に花彫刻を施すには、事前に注意しておく点があります。
前述で解説したように、和型墓石は竿石が縦に長い形状なのでデザインを入れるスペースが少ない傾向にあります。
デザイン以外に必要な彫刻が多数あるので、ほとんど施すことができません。
花彫刻のデザイン性を活かすのであれば、洋型墓石やデザイン型墓石を利用する方が横長のスペースを確保できるので、美しいデザインを施せるでしょう。
墓石を彫り加工してデザインを施すので、あまり細い線や細かなデザインが入り乱れたものなどは再現が難しくなります。
また、豪華にしたいと思い、花の数を多くしすぎるのも逆に見た目が下品になることもありあまり好ましくないとされます。
余白の部分を活用して、バランスよくデザインするとよいでしょう。
多くの墓地やお墓では、絵柄や花柄のデザインを入れた墓石の利用が許可されています。
中にはデザイン墓石を規制する墓地や、洋型墓石を規制する寺院墓地などもあるので事前に確認する必要があります。
近年では墓地のスペースがあまり広くない場所も多く、墓石も大きなものが置けないこともあります。
小型の墓石に沢山の花柄デザインなどを入れすぎると、見た目的に落ち着かない印象になるので注意しましょう。
墓石に刻むお花の種類は、人それぞれ好きなデザインを入れることができます。
必ずしもダメな花はありませんが、前述にて解説したように宗教的にあまり適さない花や、地域的によくない花とされるものを施すとトラブルの原因になります。
故人の意思を尊重するのは大切ですが、後々管理する家族がトラブルになるようなことは避けたいものです。
墓地によっては、指定石材店制度により石材店が指定されている場合もあります。
他の石材店では対応できる花彫刻デザインでも、指定されている石材店が対応できない場合に思ったような彫刻ができない場合もあります。
希望のデザインに応えてもらえる石材店なのか、事前に確認して探すことも大切です。
墓石に基礎彫刻を入れる際の費用は、5万円〜10万円ぐらいが相場とされています。
花彫刻を施すには、前述の費用と別に追加にて費用が発生します。
墓石の大きさやデザインの範囲にもよりますが、一般的に5万円〜15万円の費用追加となるケースが多いようです。
こだわったデザイン墓石にすると、範囲にもよりますが100万円〜200万円などと大きくコストが変動するので、花彫刻を検討されている場合には一度石材店に相談して見積もりをとるとよいでしょう。
墓石に施す花彫刻デザインの魅力や種類、そして彫刻を施す際の手順や注意点などを解説しました。
花彫刻に使用できない花はありませんが、宗教や地域性によっては好まないデザインもあります。
生活環境の多様化に伴い、お墓の形状も和型だけではなく、洋型やデザイン型、宗教などの垣根を越えたオリジナルの形状などさまざまな形の墓石が多くなってきています。
今後は故人の意思をより反映させやすい供養方法が多くなってくることが考えられます。
花彫刻もその選択肢の1つになりますが、花彫刻を入れる方法を検討する場合の費用感やデザインで迷ったら、石材店に一度相談すると安心です。