2024.10.10
生活環境の多様性に伴い、供養の方法も従来のイメージのものから故人の意思を尊重したモダンなものまでさまざまな方法が選択されてきています。
ここでは、墓石の種類や選び方、そして費用相場などを解説します。
墓石の種類は大まかに分類すると4種類に分けられ、墓石の形、墓石の大きさ、そして使用する石材などにより決められます。
従来から日本のお墓でよく目にする和型墓石、洋風なデザインの洋型墓石、独自のデザインで作られるデザイン墓石、宗教や土地の風習などを反映させたその他の墓石に分類されます。
それぞれの種類について以下にて解説します。
和型墓石とは、日本古来より親しまれている伝統的な墓石のことを指し、仏舎利塔を原形とするといわれており、基本的な構造は下から芝台、中台石、上台石、竿石の順に建てられたものを指します。
和型墓石の中でも、石塔により2種類の形状に分類されます。
石塔タイプは、従来から寺院などでよく見る一般的なお墓のタイプのお墓で、その中でも献花を供える花立や、線香立てが設置されている標準型と、さまざまなオプションを加えた高級型のタイプがあります。
五輪塔タイプは石塔タイプよりも竿石が短い傾向があります。
塔を構成する石材には、サンスクリット語で「地・水・火・風・空」を意味する「ア・ヴァ・ラ・カ・キャ」の文字が刻まれています。
石材の形状にはそれぞれ意味があり、宇宙の構成要素を表しているといわれ、「地」が四角形、「水」が円形、「火」が三角形、「風」が半月形、「空」が宝珠形にそれぞれ対応しています。
これらを下から順に地から空までを積んでいき、五輪塔の形を作ります。
和型墓石は、他の墓石に比べると風格があり土地柄などにも合わせたお墓も建てることができます。
洋型墓石やデザイン墓石は、霊園や墓地によって規制があり建てることができない場合がありますが、和型墓石であればそのような心配はありません。
和型墓石は古来からの風習を重んじる方によく選ばれるタイプとなります。
洋型墓石とは、和型墓石よりも横幅が広く背が低いのが特徴となり、洋風でモダンな形状の墓石を指します。
洋型墓石は、和型墓石よりも背が低いので地震などにも強い特性があります。
横幅が広いので、天然石を使用したり彫刻を施したりすることで、より自由なデザイン性を実現することができます。
洋型墓石は大きく分けて3種類の形状があります。
ストレート型は、芝台の上に竿石が垂直に置かれた形状のものを指します。
芝台の上に上台を置き、その上に竿石を置いた二段式のタイプもあります。
オルガン型は、芝台の上に配置する竿石をオルガンのように斜めに角度を入れてデザイン加工された墓石を指します。
オルガン型は洋型墓石の中で最もスタンダードな形状となり、ストレート型同様に二段型のタイプもあります。
プレート型は、竿石の文字を刻む面を天に向けて寝かせて設置されたタイプの墓石を指します。
芝台の上に設置させたタイプや、上台や中台の上に設置することもありますが、中では芝生にプレートを直接設置することもあります。
洋型墓石は、墓地によっては利用できないこともありますが、メッセージ性が高い墓石を作ることができます。
従来の霊園とは異なり、現在の霊園は土地一面に芝が茂っている洋風な霊園が増えているので、そのような場所では景観に合う洋風の墓石が選ばれることが多くなります。
モダンな見た目を要望されている際に、特に選ばれる傾向があります。
デザイン型墓石とは、従来の墓石のイメージにとらわれることなく、故人の生前の願いやイメージ、趣味などをモチーフとした墓石をオリジナルで設計して表現した墓石のことを指します。
石材専門業者があらかじめ用意したデザインにより作られるタイプと、完全にオリジナルで制作されるタイプの2通りの方法から選択されます。
一般的な墓石の色は、主にグレーや黒のような重厚感のある色が選ばれますが、デザイン墓石では墓石のデザインに合わせて赤やピンクのような明るい色も選ばれます。
石材の色から形状まで全て思いのまま設計できるので、お墓参りでは故人の生前のイメージを鮮明に思い返すことができるでしょう。
デザイン墓石は、故人との思い出を形にしたい方によく選ばれる傾向にあります。
その他の墓石としては以下のようなものがあります。
・軍人用の墓石
・お坊さん向けの墓石
・その他宗教向けの墓石
軍人用の墓石は、墓石の頭部が尖った方錘型の形をしています。
これは1874年に、陸軍省が「陸軍埋葬地ニ葬ルノ法則」により階級により墓碑の規格を統一した規定を制定した為にそのような形状となっています。
方錘型の形にした由来には諸説あり、剣先のイメージを模したという説や、新道や儒教の影響、木柱の腐食を防ぐためなどの説があります。
お坊さん向けの墓石は民間の霊園ではあまり見られることがないので、一般的にあまり知られてはいませんが、お寺などによくある縦長の卵形をした「無縫塔」といわれる形状の墓石のことを指します。
卵形の形状は、堂々として優しげな印象を与えることと合わせて、仏教の考えである「宇宙の根源は無念無想」の考えからこの形状がきているとされます。
その他にも、宗教により墓石の形状が異なることがあります。
比較的墓地で目にすることが多い「神式の墓石」と「キリスト教式の墓石」をご紹介します。
神式の墓石は、基本的に和型墓石と同じ形状となりますが、上部の竿石の頭頂部が尖っている形状や細長い形状の「角兜巾型(かくときんがた)」なのが特徴です。
この形状は神道に伝わる三種の神器である「草薙剣」をイメージしているといわれます。
神式のお墓ではお線香をあげないので、香炉がないことも特徴です。
その代わりに白木素材の8本足のお供物置きである「八足台」があります。
キリスト教式の墓石の特徴としては、他の墓石と異なり1人1つのお墓で供養されることになります。
従来のデザインは白いデザインに十字架を模した形状となっておりましたが、現在では特に制約がなく自由な形状になりつつあります。
形状的には洋型墓石に近く、墓石の高さが低く「プレート型」や「オルガン型」などと呼ばれることがあります。
お墓の価格は、前述の種類によってや、墓地の広さ、墓石の大きさ、形状やデザイン、地盤の環境などで大きく異なります。
高価であれば供養になる訳ではないので、どのような形状を選ぶことが正解かなどはありません。
しかしながら、墓石ごとに価格相場が異なるので事前に把握しておく必要があります。
一般的に使用する石材の量が多いほど、費用は高くなる傾向にあります。
また、国産の石材を使用するのか海外製の石材を使用するのかでも費用は大きく異なります。
そのために、一概に費用相場を比較算出するのは難しいですが、「一般社団法人 全国優良石材店の会」が実施した「2023年お墓購入者アンケート調査」*を参照することである程度指標を確認することができます。
*一般社団法人 全国優良石材店の会「2023年お墓購入者アンケート調査」参照
タイプ別平均価格
墓石のタイプ | 費用相場 |
和型墓石 | 189.2万円 |
洋型墓石 | 158.1万円 |
デザイン墓石 | 189.6万円 |
その他の墓石 | 146.9万円 |
和型墓石のように、下から芝台、中台石、上台石、竿石と複数の石材を使用する墓石のほうが平均相場が高い傾向にあり、洋型墓石のように芝台に竿石を一段や二段載せるタイプの方が価格は抑えられる傾向にあります。
また、一見高価に見えるデザイン墓石も、和型墓石と大きな価格差はありません。
前述の結果より、洋型墓石が安価な傾向がありますが、宗教的な制約やしきたりなどがない場合には、故人のご意向やご家族の思いを自由に墓石として表現することが供養になるのではないでしょうか。
墓石の種類ごとにおける平均価格は前述の通りですが、地域によっても価格は大きく変動します。
「2023年お墓購入者アンケート調査」によると、墓石の全国平均価格は170.7万円のところ、最も価格が高いのが九州地区の216.4万円で、逆に平均価格が低いのが北海道の132万円となります。
価格的には84万円程度の大きな開きがあるので、墓石を購入する際の一つの指標にするとよいかもしれません。
墓石にはどんな形の種類があるのか、そして墓石の選び方や費用面に関して解説しました。
形状としては故人の意志を尊重して決めるのが一般的ですが、宗教やバックグラウンドにより形が決められることもあります。
費用面では、石材をあまり使用しない洋型墓石が比較的安価な傾向がありました。
意外な面では、和型墓石と高価なイメージなデザイン墓石があまり大差のない費用相場となりました。
これは完全オーダーではなく、予め何パターンか用意されたセミオーダーで作成するケースがあることで、トータル費用が抑えられていると考えられます。
墓石を選ぶ際には、高価な費用を掛けたから供養ができるのではなく、故人をどのように供養したいかをよくご家族や親族と話し合って決めるとよいでしょう。
墓石は石材の選択を含めてさまざまな選択肢があるので、どの墓石を選ぶのがよいのか選定に悩まれることがあるかもしれません。
そのような際には、石材のスペシャリストである石材専門の業者に相談してみるとよいかもしれません。