2024.03.04
墓石を設置するには多くの費用が発生しますが、管理・維持するのにもランニングコストが発生することを認識されていない方が多くいらっしゃいます。
ここではそのような方のために「墓石設置後のランニングコストは幾らかかるのか?」「維持費と管理のポイント」などを中心に解説します。
墓石設置後にかかるランニングコストとは、墓石を設置する際に発生する購入費用(初期費用)とは異なり、お墓を設置後に維持・管理するために必要なコストのことを指します。
ランニングコストには、毎月や年単位で定期的に発生するものと、メンテナンスや交通費など不定期でかかるものがあります。
お墓の場合では寺院・霊園に設置した際の年間管理費や、お墓参りにかかる交通費などは定期的にかかるコストになります。
一方で、メンテナンスという面では墓石の修繕など不定期で発生するコストもあります。
法事の費用に関しても49日から始まり13回忌などは不定期でかかるコストといえます。
実際にお墓の維持に掛かる費用に関しては次の項目で詳細を解説します。
お墓の維持にかかる費用としては次のようなものがあります。
定期的に発生する費用としては、墓地・霊園の管理料が挙げられます。
一般的に墓地の種類は「寺院墓地」「公営墓地」「民間墓地」の3種がありますが、それぞれ管理料の相場は異なります。
相場的には次のようになります。
寺院墓地とは、その名の通りお寺がお墓の運営・管理をしている墓地を指します。
寺院墓地にお墓を設置した場合には、管理費に相当する「護持会費」を毎年納める必要があります。
護持会費の相場としては墓地により金額が大きく異なり、年間で10,000円~30,000円程度の金額となります。
公営墓地とは、地方自治体が運営・管理している墓地を指します。
公営なので地方住民の税金により運営されている墓地なので、他の墓地の管理費より比較的安い金額に設定されています。
年間の管理費は4,000円〜10,000円程度が相場になります。
募集数自体が少ない事と管理費用が比較的安価であるので需要が高く、抽選などに当選しないと利用ができないケースが多くあります。
民間墓地とは、宗教団体や財団法人が母体となり管理運営されている墓地を指します。
民間ならではのサービスや施設が充実している場所が多く、申込資格や宗教の制約などの縛りも少ないので幅広い方に利用されています。
一方その分、公営墓地よりは少し割高に管理費が設定されており、5,000円〜15,000円程度の金額が相場となります。
前途の管理費のように定期的に発生する金額の他に、不定期に発生する金額もあります。
故人へのご報告がある日や命日など、故人へ御墓参りをする際の交通費やお花代・お供え物代も不定期に発生します。
遠方の場合であると交通費として場所によっては30,000円〜50,000円などの費用が発生します。
お花・お供え物などは一般的に1,000円〜3,000円程度で準備する事ができます。
最近ではご高齢の方など、定期的に御墓参りする事が困難になるケースに対応するため「御墓参り代行」などのサービスもあります。
これらのサービスは清掃なども請け負っており、10,000円〜30,000円程度で代行してもらえます。
寺院墓地にお墓を設置する場合は、入檀の義務がある墓地がほとんどでお布施などを寄付する必要があります。
法要の際には5,000円程度の寄付をしたり、修繕や寺院の建て替えなどの場合には10万円単位での寄付をお願いされることもあります。
檀家の寄付金の額には相場などは無く、檀家の数や必要になる費用により金額が異なります。
経済的理由で寄付金の支払いが難しい場合や、寄付金の額を減らしたい場合になどの際にはお寺や護持会の総代に相談をするとよいかもしれません。
墓石を設置した後に、なるべく長期間劣化をさせないようにするためには定期的なメンテナンスや修理が必要になります。
ご自身でも墓石の洗浄や簡易的な磨きなおしなども可能ですが、シミや黒ずみなど落ちにくい汚れや墓石の表面の劣化まで補修することは難しいものです。
そのような場合には、洗浄業者や石材店などに依頼すると対応してもらえます。
洗浄は高圧洗浄・スチーム洗浄等でクリーニングするのが一般的で、費用は10,000円~50,000円など大きさや広さにより異なります。
墓石の磨きなおしに関しては、200,000円~300,000円程度の費用が相場になります。
墓地の管理やランニングコストは様々な費用が発生することを解説しました。
管理費用は墓地により決められた費用が発生しますが、ランニングコストは方法によっては次のような事をすると抑える事ができます。
お墓の周囲を防草施工する
お墓の管理の中で最も定期的にメンテナンスをする必要があるのは、敷地内に生える雑草の除去です。
雑草が一帯に生えると環境悪化に繋がるとともに、故人に対しても罪悪感が湧いてしまいます。
このような場合は、次の3つの方法を試すとよいでしょう。
防草マサとは、真砂土やろう石を主原料とした草が生えないように加工された商品を指します。
防草マサには、散水後に固まるタイプの製品と敷き均すだけで固まらないタイプの製品があります。
どちらも長期間優れた防草効果を発揮するので、管理しやすい環境を作ります。
地面の上をモルタルで固める事で、雑草が生えない状態にする事ができます。
透水性がないので水溜りができないように固める必要があります。
ストーンレジンとは、天然石と樹脂を混合して製造される自然の風合いを生かした景観舗装材の事を指します。
玉砂利のような自然な見た目ですが、固めて加工されるので優れた防草効果もあります。
永代供養墓とは一般のお墓と異なり、寺院や霊園の管理者がお墓の持ち主の代わりに永代に渡って供養をしてくれるサービスのお墓です。
後継のない方や、子供や家族にお墓の継承をされない方は永代供養も選択肢として考えてもよいかもしれません。
前途ではお墓設置後に必要になる費用を解説しました。
今までお墓の管理費用などの支払いをされた事がない方は、誰が実際に払う必要があるのかわからないものです。
お墓の維持管理費用に関しては、以下の方が支払う必要があります。
お墓の管理費用を支払うのは、一般的に「祭祀承継者」と言われるお墓などの「祭祀財産」を受け継ぎ、祖先代々からの祭祀を継ぐ事を親族より指定された方が支払いをおこないます。
長男が引き継ぐようなイメージがありますが、長男以外にも次男や他の親族の方でも指定されることにより継承する事ができ、継承すると管理費の支払い義務が生じます。
継承する方の指定がない場合は、被相続人の居住先の慣習などにより決められる事が多く、一般的には配偶者や長男が「祭祀承継者」となります。
過去の慣習などでも祭祀承継者が決まらない場合には、家庭裁判所に調停の申し立てをおこない決めてもらいます。
遺骨は祭祀財産となるので、裁判で決められた継承は拒否する事ができません。
祭祀財産の承継は拒否することができませんが、承継した祭祀財産を継承者がどのように取り扱うかは承継者の自由とされています。
よってそのまま維持管理するのか、墓じまいにするのかは継承者により決められます。
継承者は1名になり分割で複数名継承などはできませんが、親族などの援助は可能なのでよくご家族や親族と話し合われて決めるのがよいでしょう。
「祭祀承継者」が決まらなかったり、管理費の支払いが滞った場合には一般的に3年経過後にお墓の使用権利が喪失し無縁仏として強制的に墓地より退去となります。
その際には、事前に墓地・霊園の管理者によって故人の名前で官報に無縁墓の撤去の旨として掲載されます。
ご家族や親族は、墓地・霊園内で公告が出されてから1年以内に継承する意思を申し出る必要があります。
申し出がない場合には、合祀墓に移されて不特定多数の遺骨とまとめて納骨される事になります。
合祀墓に移される事に抵抗がある場合には、墓地の使用権を管理者に返すことで墓じまいをおこない、遺骨を一旦手元に返却してもらい保管する方法もあります。
今後お墓をどうするのか家族や親族で話し合う時間ができるので、あとで後悔のないようにするとよいでしょう。
消滅時効とは債権者が債務者に対して請求をせずに一定期間が経過した際に、債権者の法的権利を消滅させる制度のことを指します。
墓地の管理料は定期給付債権になるので、民放第169条「(定期給付債権の短期消滅時効)年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する」により、その消滅時効は5年間となります。*
そのため、5年間を墓地や霊園などから管理料を請求されない場合には、この制度を利用する旨を伝えることで債権が消滅するので支払いの義務がなくなります。
墓地管理料の支払いなどでトラブルになった際には、前途のようなケースもあるので頭の隅に入れておくとよいかもしれません。
墓石設置後のランニングコストの相場や、維持費と管理のポイントなどをご紹介しました。
どのような墓地に暮石を設置するかによって、日々発生する管理費は異なります。
定期的に発生する費用の他にも、お布施やメンテナンス等お墓を維持するには不定期に発生する費用もあります。
新たにお墓を設置する場合や先祖代々のお墓を未来に繋げる際には、無理のない負担範囲で維持する事が重要です。
祭祀承継者だけで維持管理を負担する事が難しい場合には、家族や親族そして近しい方の協力を得て管理することもできるので、前途の情報を役立ててみてはいかがでしょうか。